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第193通常国会、法律案成立率から国会の成否をひも解く

 国会が閉会した。閉会直後にあまり話題になることはないが、一部では、法律案の成立率に注目が集まる。内閣や議員が提案した法律案はどれだけ成立したのか。これが内閣の運営についてのひとつの指標となる数字であるからだ。その率が高いときには、時の内閣の政権運営が上手くいっているとみなされるのである。

 

表1 常会における内閣提案の法律案成立率*1

提出(本) 成立(本) 成立率(%)
2012 106 61 57.5
2013 75 63 84.0
2014 85 82 96.5
2015 75 66 88.0
2016 65 54 83.1

 

 表1は、内閣法制局が公開している法案の提出数と成立数をもとに、その成立率を割り出した一覧表である。内閣提出の法案以外に、議員提案の法案もあるが、それは野党議員が中心になって提案されたものも多く、成立に至らない例が多い。一方で、表1にあるように、内閣提案の成立率は80%を超えている。この表の中で2012年は提出数が多く、対して成立率が多いが、これは前の国会で成立せずに継続審査に付されていた法律案が23本あったことに加え、当時は民主党の野田内閣の時で、衆参の多数派が異なる「ねじれ国会」状態の中で法律案成立に苦労していたことによる。

 

 さて、ひるがえって今国会の成立状況である。ここでは、内閣提出の法律案に与党は基本的に賛成することを鑑み、野党の民進党がどう対応していたのかを見ることにする。

 

 民進党は法律案への賛否について情報を公開している。

 https://www.minshin.or.jp/download/35441.pdf

これを見ると、内閣提出法案は72本であり、成立は66本となっている。成立率は91.6%と近年でも高い率となっている。民進党は、成立した66本のうち52本に賛成している。率にすると約80%となり、一般的なイメージとして「何でも反対している野党」というものがあるとしたら、それはあてはまらない状況にあると言える。さらに、詳細に見ると、民進党が提出した修正案が可決された例も見られるところである。

 

 成立した66本のうち14本に民進党は反対したことになる。このような反対に対しても、「反対をするなら対案を出せ」という批判が向けられるところだが、対案・別案提出が5本、修正案提出が3本と、民進党は何らかの対案を計8本については出していた。つまり、反対14本中8本については、ただ反対だけをしていたわけでないのである。残り6本について、何らかの対案を出せなかったことにつき批判は当然存在するだろうが、対案もなしに全て反対というイメージは間違いであると言える程度に野党として活動をしていたと言えよう。

 

 とかく国会では与野党が対立する場面が強調され、また法律案の成立率でいうと内閣提案の法案について注目が集まるところであるが、野党の側から見ることで、また違った様相を見えてくるのである。様々な法律案が国会には提出されており、その内容がどのようなもので、どの政党が賛成・反対したのか。目立つ法律案以外にも目を向けていく必要があるだろう。

 

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今回の内閣提出法律案は以下となっている。

第193回国会での内閣提出法律案一覧 / 内閣法制局

※成立の状況については最新の情報ではないため、最新の情報は民進党を要参照

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